(財)亜熱帯総合研究所
日本におけるミバエ類根絶事業関連研究妙録集

 

ガンマ線照射によるイモゾウムシ雌の不妊化機構に関する研究

□Author 桜井宏紀;村上善紀;小濱継男;照屋匡
□Year 2000
□Journal 岐阜大農研報
□Volume 65
□Issue
□Pages 13-20
□Notes Japanese

 イモゾウムシの雌における放射線不妊化の機構を明らかにするため,卵形成と消化機能に及ぼすガンマ線照射の影響を検討した。羽化後2日目の雌個体へのガンマ線照射により,卵母細胞の発育は抑制され,70Gy照射虫では卵胞の瀘胞上皮細胞の核濃縮や核崩壊により,卵母細胞への栄養供給は阻害されて成熟卵が形成されず不妊化した。一方,70Gy照射虫の中腸上皮では円柱細胞の核の崩壊・退化がみられ,中腸内腔には桿状の共生細菌が群生した。また,成虫の虫体のグリコーゲン含量は照射により激減し,90Gy照射では減少は顕著であった。このことから,ガンマ線照射により中腸上皮に障害を生じ,栄養欠乏を起こすことが成虫の寿命低下の一因であると推察され,体細胞に影響が少ない照射線量や照射時期の決定の必要性が示された。


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